テレワークの普及や価値観の多様化が進む中、企業内での情報共有やエンゲージメントの維持に課題を抱える担当者も多いのではないでしょうか。インナーコミュニケーションは、そうした環境下で従業員同士のつながりや理念の浸透を図るために欠かせない施策です。しかし「何から始めればよいのか」「他社はどのような取り組みをしているのか」と悩む声も少なくありません。
そこで今回は、企業規模や目的別に整理したインナーコミュニケーションの施策事例と、導入における成功ポイント・注意点を詳しく紹介しています。自社に適した施策を検討するヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
インナーコミュニケーションとは?

インナーコミュニケーションとは、企業や組織内で実施される情報共有や意思疎通の取り組みを指し、従業員同士や部門間、さらには経営層と現場との間で円滑な連携を図ることを目的とした施策全般を含みます。社内報やイントラネット、社内イベント、1on1面談など、形式は多岐にわたりますが、いずれも「組織の一体感を高める」「従業員のエンゲージメントを向上させる」といった目的が共通しています。
近年では、テレワークや多様な働き方の浸透によって、対面での接点が減少傾向にあり、インナーコミュニケーションの重要性は一段と増しています。
インナーコミュニケーションが注目される理由とは?
近年、企業がインナーコミュニケーションに注力する背景には、働き方や雇用形態の変化、従業員の価値観の多様化といった時代の流れがあります。ここからは、インナーコミュニケーションが今注目される具体的な理由を掘り下げていきます。
テレワークの拡大による対面機会の減少
近年、テレワークやリモートワークの導入が急速に進んだ影響で、従業員同士がオフィスで自然に交わす雑談や情報交換の機会が大きく減りました。その結果、部署間の連携が弱まり、チーム内での信頼関係を築きにくくなるなど、組織としての一体感の低下が懸念されています。
さらに、新入社員や異動者にとっては、既存メンバーとの関係を築いたり企業文化を理解したりすることが難しくなるケースも増えつつあります。こうした状況を受け、時間や場所にとらわれずに交流を促進する「インナーコミュニケーション施策」の重要性が高まっています。非対面環境においても従業員同士のつながりを維持・強化する取り組みが、今や多くの企業で強く求められています。
終身雇用から流動型雇用への変化
かつては一般的だった終身雇用も、現代では多様な働き方やキャリア観の広がりにより、流動型雇用へと大きく移行しています。従業員が1つの企業に長く在籍する時代から、スキルや価値観に応じて転職や副業を選ぶ時代へと変わったことで、企業文化や理念が十分に浸透しないまま人材が入れ替わるリスクが高まりました。
その影響により、組織の結束力や共通意識が薄れやすくなっています。このような環境では、入社初期から社内文化を理解してもらい、エンゲージメントを高めるためのインナーコミュニケーション施策が重要となります。
従業員の価値観・働き方の多様化
ワークライフバランスを重視する人や、スキルアップを目的に副業を選ぶ人、さらには子育てや介護との両立を図る人など、現代の従業員が持つ価値観や働き方は非常に多様です。こうした多様性は企業にとって新たな活力の源になりますが、同時に従来の画一的なコミュニケーションでは、意図や情報が伝わりにくくなるという課題も生じます。
すべての従業員に共感されるメッセージの発信や、個々に適した情報提供手段の選定が求められる状況においては、インナーコミュニケーション施策の柔軟な運用が欠かせません。多様な声に耳を傾け、双方向かつ包摂的な環境を整えることが、組織の一体感と生産性の向上につながるはずです。
エンゲージメントとモチベーションの重要性向上
組織の生産性や持続的な成長を実現するうえで、従業員エンゲージメントとモチベーションの重要性が一段と高まっています。自身の仕事に誇りを持ち、組織の目標と個人の成長が結びついていると実感できる従業員は、主体性や創造性が高く、離職率も低い傾向にあります。
ただし、変化の激しいビジネス環境や価値観の多様化においては、従来型のマネジメントだけでその状態を維持するのは容易ではありません。こうした背景を踏まえ、求められているのがインナーコミュニケーションによる双方向の信頼関係の構築です。適切なフィードバックの提供や社員の声を反映した施策に加え、共感を生むメッセージの発信を通じて、従業員が「この会社で働く意義」を感じられる環境づくりを進めることが重要です。
離職防止・定着率向上への期待
人材の流動化が進む中で、優秀な人材を確保し、長期的に定着させることは企業にとって重要な課題となっています。給与や待遇だけでは従業員の満足度を維持するのが難しく、職場に対する安心感や帰属意識が欠けると、離職リスクはいっそう高まります。こうした課題に対して有効なのが、インナーコミュニケーションによる継続的な情報共有と信頼関係の構築です。経営層からの定期的なメッセージ発信や、日常的なフィードバックの仕組みによって、従業員は「自分は組織の一員である」と感じやすくなります。
また、成果や努力が正当に評価される環境は、働きがいの向上にもつながります。
企業理念・ビジョンの浸透ニーズの高まり
変化の激しい時代において、従業員が同じ方向を向いて行動するためには、企業の理念やビジョンが組織全体に浸透していることが欠かせません。特にテレワークや副業の普及により、社員が物理的にも心理的にも組織から離れやすくなっている現在では、共通の価値観や目的意識を育む取り組みがいっそう重要視されています。
ただし、理念を掲げるだけでは不十分であり、日々の業務の中でそれを実感できる仕組みが求められます。リーダー層が率先して体現し、全社で共有する場を設けることが有効です。インナーコミュニケーションを通じて理念を言語化し、繰り返し発信することにより、従業員の意識や行動にも自然と浸透していきます。
【目的別】企業が活用できるインナーコミュニケーション施策の事例
インナーコミュニケーション施策は、その目的によって最適な手法が異なります。ここでは、目的別に分類した代表的な施策とその活用方法を紹介します。
社内文化の浸透を目指す施策(例:社内報、アワード)
社内文化の浸透を目的とした施策の中でも、代表的なものが社内報やアワード制度の導入です。社内報では、経営陣のメッセージや部門ごとの取り組み、社員インタビューなどを通じて、企業の価値観や理念を日常的に発信できます。紙媒体に加えて動画やデジタル形式を活用すれば、若手社員やリモートワーカーにも届けやすくなります。
一方、アワード制度は企業が重視する行動規範に基づいた貢献を称える仕組みであり、従業員の行動と理念の接続を促進する有効な手段です。さらに、受賞者の取り組みを全社に共有することで波及効果が期待でき、エンゲージメントや一体感の向上にも好影響をもたらします。
これまでタノシナルは様々な企業のアワードをサポートしてまいりました。その中から企画の一例をご紹介します。

従業員エンゲージメントを高める施策(例:社内イベント、ファミリーデー)
従業員エンゲージメントを高めるには、日常業務を超えたつながりを築ける施策の導入が有効です。例えば社内イベントは、部署や役職を問わず交流できる貴重な機会となり、帰属意識や相互理解の醸成につながります。忘年会やキックオフミーティングのほか、チームビルディングを目的としたワークショップやスポーツ大会など、目的に応じて多様な形式が考えられます。
さらに、家族を招くファミリーデーは、社員の働く姿を身近な存在に見てもらえる好機であり、家族の理解や応援を得ることでモチベーションの向上にもつながります。これらの施策は、感謝や承認の場としても機能し、日々の業務では得にくいポジティブな体験を社内に広げる役割を果たします。
タノシナルでは、リアル開催はもちろんオンラインでのファミリーデーも企画立案から運営まで一気通貫で承っています。

働きやすい環境づくりに貢献する施策(例:フリーアドレス制度、1on1)
働きやすい環境を整えることは、従業員の満足度や生産性を高めるうえで欠かせない要素です。例えば、固定席を廃止して自由に働く場所を選べる「フリーアドレス制度」は、部門を越えた偶発的なコミュニケーションを促進し、柔軟な働き方の実現にもつながります。
また、上司と部下が定期的に対話を行う「1on1ミーティング」は、業務上の課題に加え、キャリアや心身の状態についても話しやすい場として機能します。こうした取り組みにより信頼関係が深まり、早期対応や離職防止にも寄与します。制度の導入にとどまらず、継続的な実施や社員の声を反映した見直しが重要です。安心して働ける職場づくりは、健全なインナーコミュニケーションの基盤となります。
情報共有を促進する施策(例:イントラネット、社内SNS)
円滑な情報共有は、インナーコミュニケーションの基盤を支える重要な要素の1つです。イントラネットを活用すれば、業務マニュアルや社内ニュース、申請書類などを一元管理でき、従業員が必要な情報へ迅速にアクセスしやすくなります。
さらに、社内SNSの導入により、部署を越えた気軽なやり取りやナレッジ共有が促進され、組織全体の連携も強化されます。加えて、タイムリーな情報発信やコメント・リアクションといったインタラクティブな機能を組み合わせることで、社員間の関係性や当事者意識が醸成されやすくなります。特にリモート勤務が広がる現在では、非対面でも一体感を保てる仕組みとして有効です。
【企業規模別】インナーコミュニケーションの活性化を図る具体的な施策事例
インナーコミュニケーション施策は、企業の規模によって課題もアプローチも大きく異なります。ここでは、企業規模ごとの特性に応じた具体的な成功事例を紹介し、自社での導入イメージにつながるヒントを提供します。
大企業の仕組み
多言語対応やポータルの全社展開、緊急時の対応体制など、規模の大きさを活かしつつも、分断を防ぐために工夫されているインナーコミュニケーション施策の事例を紹介します。
グローバルな共通言語を用いたコミュニケーション体制
海外拠点や多国籍人材を抱える企業においては、円滑なインナーコミュニケーションのために「共通言語」の整備が不可欠です。例えば、英語を社内共通語とすることで、国籍や勤務地にかかわらず情報の非対称性を軽減し、部門間や地域間の連携も促進されます。あわせて、社内文書やイントラネットの多言語対応や翻訳支援ツールの導入といった運用面の工夫も効果的です。
さらに、異文化理解を促進する研修やカルチャーセッションを取り入れることで、言葉だけでなく価値観の共有も進みます。言語統一によって生まれる透明性や公平感は、グローバルな組織の一体感を築く基盤となります。多様性を尊重しつつも共通の軸を持つ環境づくりが、国境を越えたチームの成功を支える要素となるでしょう。
社内ポータルサイトの全社展開による情報共有
社内ポータルサイトの全社展開は、情報の集約と可視化を通じて、コミュニケーション基盤を強化する有効な施策です。各部署の業務マニュアルや手続き書類、社内ニュース、FAQ、申請フローなどを一元管理することで、従業員は必要な情報へ迅速かつ正確にアクセスできます。
さらに、検索機能やアクセス権限の設定により、業務に応じた情報提供が可能となり、情報の属人化や伝達漏れも防げます。掲示板やお知らせ機能を活用すれば、経営層からのメッセージや全社的なアナウンスを確実に届けることができ、組織の方向性の共有にも貢献します。加えて、動画や画像を用いたコンテンツ展開により視認性や理解度も向上します。情報を「探す」手間を省き、「伝わる」環境を整えることが、業務効率とエンゲージメントの向上につながります。
危機管理と連動した内部コミュニケーションの整備
災害や感染症、情報漏えいといった緊急時のリスクに備えるためには、危機管理と連動した内部コミュニケーション体制の整備が不可欠です。全社で統一された連絡手段や情報発信ルートをあらかじめ明確にしておけば、有事の際も混乱を最小限に抑えることが可能になります。例えば、社内ポータルやチャットツールを活用した緊急連絡体制の構築や、マニュアル・Q&Aの整備、定期的な訓練やテスト配信などが効果を発揮します。
中規模企業の実践
次に、部署横断型のプロジェクト編成や社内ニュースレター、教育とフィードバックを通じた対話の循環など、実際に効果を上げている中規模企業の施策を紹介します。
部署横断型チームによるコミュニケーションの活性化
部署間の壁を越えて連携を深めるには、部署横断型チームの編成が有効なインナーコミュニケーション施策の1つです。プロジェクト単位や課題解決型のチームを組成することで、異なる専門性や視点が交わり、新たな発想や協働の機会が生まれます。普段接点の少ないメンバー同士が協力することで社内ネットワークが広がり、信頼関係の構築も促進されます。その結果、組織全体の一体感も高まります。
特に中規模企業では、特定部署に業務や知識が集中しやすく、情報の偏りや属人化が課題になりがちです。こうしたリスクを抑え、知見を循環させるうえでも横断型チームの活用は効果的です。業務効率と連携強化を両立する施策として、積極的な導入を検討する価値があります。
社内ニュースレターを活用した情報共有
社内ニュースレターは、全社員に向けて定期的に情報を届けられる効果的なツールです。例えば、経営層のビジョン共有や各部署の取り組み・成果、社員インタビューなどを掲載することで、組織全体の方向性や価値観の共有が促進されます。テレワークが進む中で対面の機会が減っても、共通の話題や認識を形成する手段として有効です。紙やPDF形式に限らず、動画やWeb形式を取り入れることで、世代や働き方を問わず情報が伝わりやすくなります。
さらに、社員の声や現場のリアルを盛り込む構成にすることで、共感や関心を引き出すことも可能です。
教育プログラムとフィードバックループの導入
従業員の成長支援と組織の活性化を両立させる施策として、教育プログラムとフィードバックループの導入が注目されています。例えば社内研修やeラーニングを通じて知識やスキルの底上げを図り、学習成果や実践内容に対して定期的にフィードバックを行えば、学びの定着とともに社内の対話も活性化します。
特に中規模企業では、部署や職種によってスキルや情報にばらつきが生じやすく、共通理解を形成するためにもこうした仕組みが有効です。また、受講者の声を回収・反映するプロセスを取り入れることで、教育内容や運営方法が現場のニーズに即した形へと進化します。
さらに、トップメッセージの即時共有や各部署との連携状況の可視化も、社員の安心感と行動の一貫性を支える要素となります。平時からの備えと発信ルールの明確化が、非常時における信頼性の高い社内体制の構築につながります。
小規模企業の工夫
最後に、定例ミーティングの活用や組織のフラット化、デジタルツールの導入など、小規模だからこそ実践しやすい施策を紹介します。
定例ミーティングによる情報共有の習慣化
定例ミーティングの実施は、情報共有の習慣を組織に根付かせるうえで基本かつ効果的な施策です。週次や月次など、定期的なタイミングで全体会議や部門ごとのミーティングを行うことで、組織の方向性や進捗状況を把握しやすくなります。特に小規模な組織では、対面で話す機会が信頼関係の醸成に直結し、業務連携の円滑化にもつながります。
また、単なる報告にとどまらず、意見交換や質疑応答の場を設けることで、社員一人ひとりの当事者意識も高まります。さらに、オンラインでの実施を組み合わせれば、テレワーク環境でも継続的な対話を維持できます。情報の見える化と定着が、組織の一体感や業務効率の向上につながる重要なカギとなります。
上下関係をなくすフラットな組織づくり
上下関係を意識させないフラットな組織づくりは、風通しの良い職場環境を実現するうえで大きな効果を発揮します。役職にとらわれないオープンな対話が促されれば、現場の声が上層部に届きやすくなり、意思決定の質やスピードの向上にもつながります。例えば、役職を外して話せる社内座談会の開催や、全社員が自由に発言できるチャットツールの導入は効果的です。
また、上司からの一方的な指示に偏らないよう、部下からの提案や意見を受け入れる文化を育むことも重要です。こうした取り組みによって心理的安全性が高まり、社員の主体性や創造性を引き出す基盤が築かれます。特に小規模な組織では、柔軟性と一体感を醸成するうえで大きな役割を果たすでしょう。
デジタルツールを活用した日常的な対話環境の整備
テレワークやフリーアドレスなど、働き方が多様化する中で日常的な対話を維持するには、デジタルツールの活用が欠かせません。チャットツールやビデオ会議システム、社内SNSを導入することで、時間や場所に縛られずに気軽なやり取りが実現します。例えば、チーム内に雑談専用のチャンネルを設けたり、上司への相談窓口を用意したりすることで、業務外の話題も共有しやすくなります。これにより心理的距離が縮まり、関係性の構築が進みます。
また、絵文字やリアクション機能を使うことで、対面に近い感覚のやり取りが可能になる点も利点です。ツールは単なる情報共有の手段にとどまらず、一体感を育む場としても機能します。
インナーコミュニケーション活性化のポイント
インナーコミュニケーションを効果的に機能させるには、単なる施策の導入だけでなく、その運用や伝え方にも工夫が求められます。ここからは、社内の一体感やエンゲージメントを高めるために押さえておきたい重要なポイントを紹介します。
自社の課題やフェーズに合った施策を選定する
インナーコミュニケーション施策を成功に導くには、他社事例を単に模倣するのではなく、自社の課題や組織の成熟度に即した選定が重要です。例えば、エンゲージメントの低下が問題となっている場合は、社員の声を可視化し、それをフィードバックにつなげる仕組みが有効です。一方で、理念の浸透が十分でない段階では、社内報やトップメッセージの発信といった情報伝達型の施策が適しています。
また、拠点や部門の数、働き方の多様性によっても選ぶべき手法は異なります。施策の目的やタイミングを明確にし、自社の状況と照らし合わせながら、段階的に導入・改善を重ねることが重要です。
社員参加型で双方向のコミュニケーションを促す
インナーコミュニケーションの活性化を図るには、社員が受け手にとどまらず、主体的に関わることができる「参加型」の仕組みが有効です。一方的な情報発信だけでなく、意見や感想を共有できる場を設けることで、双方向のやり取りが生まれ、組織全体の一体感も醸成されます。例えば、社員投票による表彰制度やチャットツールでのアイデア募集、社内イベントにおけるグループディスカッションなどは、誰もが声を上げやすい雰囲気づくりにつながります。
さらに、経営陣が社員の意見に対して具体的なアクションを取ることで、「意見が反映される」という実感が生まれます。こうした参加型の取り組みは、信頼関係の構築とエンゲージメントの向上を同時に実現する手段といえるでしょう。
施策は定期的に見直し・改善を行う
インナーコミュニケーション施策は、導入して終わりではなく、継続的な運用と改善が不可欠です。組織や働き方、従業員の価値観は常に変化しており、かつて効果のあった施策であっても、時間の経過とともに形骸化するおそれがあります。そのため、定期的なアンケートやヒアリングを通じて社員の声を拾い、課題やニーズの変化を的確に捉えることが重要です。
また、施策の進行状況や成果を可視化し、改善に活用できる仕組みを整えることで、柔軟かつ実効性のある運用が実現します。社内のコミュニケーションがうまく機能しているかを定期的に振り返り、必要に応じて手法やツールを見直す姿勢が、信頼性の高い施策と組織活性化の原動力となります。
複数の施策を組み合わせて相乗効果を狙う
インナーコミュニケーションの効果を最大化するには、単独の施策に依存せず、複数の手法を組み合わせて展開することが重要です。例えば、社内報による理念浸透と1on1ミーティングでの個別対話、チャットツールを用いた日常的なやり取りを併用すれば、情報の理解から共感、行動の定着までを一貫して促進できます。施策同士が互いを補完するように設計することで、多様な価値観や働き方に対応しやすくなり、参加率や満足度の向上も期待できます。
また、複数のチャネルを通じて発信されたメッセージは記憶にも残りやすく、組織全体への波及効果を高める要素にもなります。目的や対象層に応じて適切に施策を組み合わせることが、持続可能で効果的なコミュニケーション環境の構築につながります。
社員にとって「意味ある発信」を意識する
インナーコミュニケーションの発信内容は、単に情報を届けるだけでなく、社員にとって「意味がある」と感じられることが重要です。業務連絡や理念の伝達にとどまらず、「なぜ必要な情報なのか」「自分とどう関係するのか」が明確であれば、共感や理解を得やすくなります。
さらに、社員の努力や成果を取り上げたり、現場の声を反映したりすることで、関与を実感できる発信となり、エンゲージメントの向上にもつながります。形式にとらわれず、タイムリーかつ誠実なメッセージを発信する姿勢が、信頼関係の構築に欠かせません。「伝えたいこと」だけでなく、「受け手が受け取りたいこと」にも配慮した情報設計が、社内コミュニケーションの質を高めるポイントといえるでしょう。
インナーコミュニケーションに役立つ施策・ツールまとめ
インナーコミュニケーションを促進するには、目的や組織の状況に応じて最適な施策やツールを選定することが重要です。ここからは、すぐに実践できる代表的な取り組みを具体例とともに紹介します。
社内SNS・チャットツール
社内SNSやチャットツールは、部署や役職に関係なく、リアルタイムかつフラットなコミュニケーションを可能にする手段です。従来のメールとは異なり、気軽なやり取りや迅速な情報共有ができるため、意思決定のスピード向上や社員同士のつながりの強化に寄与します。
さらに、雑談用のチャンネルやスタンプ機能の活用によって業務外の交流も生まれやすくなり、心理的安全性の向上にもつながります。非対面環境でも社員の存在感や一体感を保つツールとして有効であり、テレワークやフリーアドレスを導入する企業にとっては特に重要な役割を果たします。導入時には、目的や運用ルールを明確にし、社員が安心して使える環境づくりを意識することが大切です。双方向のやり取りを日常的に定着させることが、社内全体の活性化へとつながります。
社内ポータルサイト・イントラネット
社内ポータルサイトやイントラネットは、全社向けの情報発信と共有の中核を担うツールです。業務マニュアルや各種申請書類、社内ニュースなどを一元管理し、従業員が必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えることで、業務効率と組織全体の透明性が向上します。
また、トップメッセージの発信や社内FAQの設置を通じて、経営層と現場との距離を縮める役割も果たします。検索機能やアクセス権限を活用すれば、情報の迷子や属人化も回避できます。さらに、動画や画像を用いたコンテンツ展開により、視認性や理解促進にもつながります。ポータルの活用は情報を「届ける」だけでなく、「伝わる
」仕組みとして設計することが大切です。社内の情報基盤として、戦略的に整備・改善していく姿勢が求められます。
イベントや部活動などのリアル施策
リアルでのつながりを重視した施策として、社内イベントや部活動の実施はインナーコミュニケーションの活性化に効果を発揮します。忘年会や運動会などの全社的なイベントは、部署を超えた交流を促進し、社員同士の相互理解や一体感を育む機会となります。
一方で、趣味を通じた部活動やサークル活動は、日常業務とは異なる接点を生み出し、気軽なコミュニケーションの場として機能します。こうした取り組みは、新入社員や異動者が早期に社内に溶け込むきっかけにもなります。活動内容や頻度に柔軟性を持たせつつ、会社として支援制度や告知体制を整えることで、参加への意欲も高まります。オフラインならではの温度感が、信頼関係と組織力の強化につながるでしょう。
オンラインでも使える工夫
テレワークやフレックスタイムの普及により、非対面でも円滑にコミュニケーションを図る工夫が求められています。例えば、朝会や夕会をオンラインで行うことで、日々の情報共有や軽い雑談の場を確保できます。バーチャル背景を使ったテーマトークやオンラインランチ会なども、リモート環境下でのつながりを育むきっかけになります。チャットツールには雑談専用チャンネルを設け、業務外の話題も歓迎する雰囲気をつくることで、心理的なハードルが下がります。
さらに、社員の声を収集するオンラインアンケートや、アイデアを募る投稿制度を取り入れれば、双方向のやり取りも活発化します。物理的な距離を超えて一体感を生み出すには、こうした小さな工夫を継続することが重要です。
事例から学び、自社に合ったインナーコミュニケーション施策を実践しよう
インナーコミュニケーションの施策は、企業の課題や規模、文化によって最適な形が異なります。事例を参考にすることで、自社に適したアプローチの方向性を具体的に描くことが可能になります。
ただし、他社の取り組みをそのまま模倣するのではなく、自社の課題やフェーズに照らし合わせながら柔軟に設計・改善していくことが重要です。成功のカギは、社員が主体的に関われる双方向の仕組みと、継続的な見直しによる運用の質の向上にあります。複数の施策を組み合わせて相乗効果を高めながら、自社らしいコミュニケーション環境を整備していきましょう。
 
       
                               
                              